ワラーチランみたいなものは、「何これ?おもしろそー」って思ったら始めてみて、「何これ?おもしろいじゃん!」って思ったら続けてみて、そのうち身体が変わっていくのを「ワー、スゴイ!」って楽しんでほしいんですが、「起こる身体の変化は?根拠は?」ってことになったら、『NHKスペシャル ミラクルボディー 持久力の限界に挑む』を見てみたら、って言います。

『NHKスペシャル ミラクルボディー』はトップアスリートのパフォーマンスの秘密に高性能機器を駆使して迫るドキュメンタリー番組で、今年のリオ五輪開幕前には第5弾が3回に分けて放送されました。『持久力の限界に挑む』は第3弾の3回目として2012年7月に放送され、内容は、フルマラソンを2時間3分台で走るランナーの秘密を「フォーム」と「心肺機能」を切り口に分析していくものでした。

見てほしいのは「フォーム」のほうです。対象者は、その前の年に2時間3分38秒の当時世界記録で走ったパトリック・マカウ選手と、ロンドン五輪代表の山本 亮選手。

番組ではつま先小指側から着地するマカウ選手と、
マカウ選手の着地
比較的かかとに近い部分で着地する山本選手とを比較して、
山本選手の着地
マカウ選手の強さの秘密がつま先着地にあると導いています。

1.つま先着地の利点
番組が主張するつま先着地の利点は主に3つです。

1.着地衝撃を受けにくい
両者の着地衝撃のピークの比較がこちら。
着地衝撃比較
山本選手が体重の2.2倍の衝撃を受けるのに対して、マカウ選手は1.6倍。
これは、かかと着地が地面の動きに逆らうような角度であたりやすいことも大いに関係しています。つま先着地でも、進行方向に差し込むように着地すれば、しないほうがいいと強く思いますが、もう少し大きい衝撃を受けるでしょう。

2.ふくらはぎの筋肉の負担が少ない
着地衝撃が小さいのはなんとなく想像つきますよね。でも、ふくらはぎがすぐバテるでしょ、って思いませんか? 私もランニング足袋の「MUTEKI」やワラーチで走るまではかかと着地だったんですが、つま先着地ってどう?っていわれるたびに、「ふくらはぎ、もたんだろー」って思っていました。
ランニング足袋MUTEKIの関連記事はこちら:ワラーチを製作・販売するようになったいきさつ
ところが実際は
ふくらはぎの筋活動
山本選手が最大筋力の81%を着地のたびに発揮しているのに対してマカウ選手は48%。
私自身、つま先着地に変える前と後とで、最も認識が違うのがコレに関してです。こればかりは、実際に走ってみないとわからないかもしれません。ふくらはぎは本当に楽です。

3.深部底屈筋群の発達
番組では下腿にある長母趾屈筋,長趾屈筋,後脛骨筋を総称して深部底屈筋群と呼んでいて、マカウ選手の断面積が山本選手のそれに比べて37%大きいという結果を示しています。
下腿断面
これもまた、つま先着地で走っているから発達しているのだろうと、日本人研究者がコメントしています。
番組では着目していませんが、長・短腓骨筋もマカウ選手のほうがずいぶん大きいように見えます。
BlogPaint
いずれも細い筋肉たちですが、土踏まずの保持足首の安定に重要な役割を果たしています。腓骨筋なんて、捻挫を防ぐのにすっごく大事。

2.つま先着地が身に付いたのは裸足だったから
長年にわたり東アフリカのランナーを調査しているイギリス・グラスゴー大学のヤニス・ピツラディスという研究者は「小さい頃に靴をはかないから、つま先着地が習慣になるのだろう」と言っています。マカウ選手も子供のころは裸足で生活していたそうです。たしかに、裸足でかかと着地はできません。

3.裸足で走るわけにはいかないので、ワラーチ
着地衝撃が小さくなればケガの減少に、筋肉の負担が少なくなれば持久力アップに、足首が安定すればケガ予防と技術の上達にそれぞれ有利だろう、と、ランナーとしてもトレーナーとしてもすぐにピンときたのですが、ほんじゃ裸足で走ろうか、ってわけにはいきません。冬は足が冷たくて走れない、真夏は地面が熱くて走れない、そもそも足の裏が無事ではすまないでしょうしね。

だったらワラーチで、っていうのがワラーチ推しの理由です。自分で履いて走っても、治療院でサポートしているチームでも練習に取り入れても、やっぱりイイんでね。

ワラーチが上手くいかなかったランナーの話も聞かないではないんですが、どんだけ走ったんでしょう?結論だすの早すぎるんじゃないでしょうか? マカウ選手が幼少期からの生活習慣で身に付け発達させたものを、我々が日本で時々ワラーチ履いて走るだけで、すぐ獲得できるはずがないんですよ。時間がかかるに決まってるんです。じっくり気長にやらないとね。

ちなみに、私もサポートチームの選手も、技術の上達を除けば手ごたえ十分。技術の上達にも、正直わかりにくいんですが、貢献してるんじゃないかな~って思っています。

4.ランシューでもつま先着地が身に付くか?
難しいと思います。よほど薄っぺらいソールのシューズであれば別ですが、ランシューは基本かかと着地ができちゃうように作ってあるので、その環境でつま先着地を習得しなおすのは相当効率が悪いと思います。

メレルの『Vapor Glove』やTESLAというメーカーの『BARETREK』くらいまで極端に薄いソールのシューズなら可能かもしれません。

5.身に付けたつま先着地はランシューで失われるか?
シューズを選んで走れば大丈夫ではなかろうかと、今のところ考えています。つま先とかかとの高低差が大きいほど、かかとから着地しやすいので、できるだけフラットなシューズを選ぶほうが無難です。アルトラとかinov-8とか、近頃はそうでもないようですがメレルとか、そういったメーカーのラインナップを見てみてください。

 

『ミラクルボディー』は、検索すればまだ見られる動画サイトが見つかるかもしれません。